ワークショップ開催!

<第1回>富士山を考える会WS
〜登山道の新しい観光と環境のあり方をみんなで考える〜

概要

多くの人に親しまれている富士山ですが、現在は五合目以上への利用が集中し、「五合目観光」や「頂上での御来光」を目的とした登山が主流となっています。一方で、一合目から五合目にかけての登山道や麓エリアには、自然・文化・歴史といった豊かな魅力が数多く残されているにもかかわらず、十分に伝えきれていないという課題があります。
こうした状況を踏まえ、富士山の環境や文化の価値を守りながら、麓から頂上までを一体として活かす新しい観光のあり方を考えるため、「富士吉田登山道の新しい観光と環境のあり方をみんなで考える」ワークショップを開催しました。

本ワークショップには、「富士吉田登山道」に関わる多様な立場の方々が参加しました。
山小屋経営者、登山ガイド、観光事業者、環境団体、研究者、行政など、日頃それぞれの現場で富士山と向き合っているステークホルダーが一堂に会し、率直な意見交換を行いました。

開催日:2023年10月30日
場所:富士吉田市 中村会館
参加者:19名(ほか運営スタッフ)

当日の内容

富士山の「魅力」を共有する

前半のワークショップでは、参加者それぞれが感じている富士山の魅力を持ち寄りました。
麓から山頂までを描いた大きな絵の上に、写真や付箋を貼りながら意見を可視化し、特に「30年後にも残したい魅力」に投票しました。

意見としては、

  • ご来光や森林限界など、標高ごとに異なる景観の魅力
  • 山小屋の存在が支える安全な登山文化
  • 鳥居や神社、富士講に代表される信仰や巡礼の歴史
  • 草原や森、野鳥・昆虫などの高い生物多様性
  • 北口本宮冨士浅間神社を起点とした麓と山をつなぐ物語

など、自然・文化・人の営みが重なり合う富士山ならではの価値が多く挙げられました。

富士山が抱える「課題」を整理する

後半では、富士山の課題について同様に意見を出し合いました。

主な課題としては、

  • 弾丸登山やマナー違反、ゴミ問題
  • 山小屋や登山道利用に関する理解不足
  • 歴史的建造物や遺構の老朽化・廃墟化
  • 登山道の案内や情報の分かりにくさ
  • 麓エリアの滞在時間が短く、地域に経済が循環しにくい点

などが共有されました。
特に、富士山が信仰の山であった背景や、地域の人々がどのように富士山と共に生きてきたのかを伝えていくことの重要性について、多くの参加者の認識が一致しました。

この日の結論

第1回ワークショップでは、立場や関わり方の異なる参加者が意見を交わす中で、いくつかの共通した認識が浮かび上がりました。

まず、富士山の魅力は山頂や五合目だけにあるのではなく、麓から頂上まで連続して存在しているという点です。
自然景観の変化、信仰や巡礼の歴史、山小屋や地域の人々の営みなど、標高ごとに異なる価値が重なり合って富士山全体の魅力を形づくっていることが再確認されました。

一方で、現在の利用のされ方は五合目以上に集中し、弾丸登山やマナーの問題、歴史的資源の荒廃、情報不足といった課題が顕在化しています。
これらの課題は、単なるルールや設備の問題ではなく、富士山が本来持ってきた文化的・精神的な背景が十分に伝わっていないこととも深く関係しているという認識が共有されました。

そのため、今後目指すべき方向性として、

  • 麓から登る価値や意味を伝えること
  • 自然・文化・信仰を「体験」として感じられる機会をつくること
  • 登山者・観光客と地域との関係性を丁寧に結び直すこと

が重要であるという点で、多くの参加者の考えが一致しました。

今回のワークショップは結論を出す場ではなく、共通の土台となる認識を共有する場でした。
この合意を出発点として、次回以降は具体的な取り組みやプログラムづくりへと議論を深めていきます。